Footy talks Vol.5「2日間で駆け抜けたフェロー諸島サッカー」

昨年の北欧遠征シリーズ、ラスト3本目を飾るのはフェロー諸島です。

前回:Footy talks Vol.4「街中を練り歩くサポーターたち」

前々回:Footy talks Vol.3「北欧のコミュサカに触れてきた」

私自身約5年ぶりの訪問です。9月3日のW杯予選フェロー諸島vsアンドラを観に行きました。

コペンハーゲン国際空港からたった2時間のフライトで行けるフェロー諸島。忙しい遠征ルートの合間を縫って組み込みました。それだけサクッと行くこともできる場所なのです。フェロー諸島って。

滞在時間は2日間。非常に忙しいスケジュールですが、その中で出来る限りフェロー諸島サッカーを楽しんできました。

フェロー諸島史上最も勝利を義務付けられた試合

フェロー諸島が欧州のやられ役だなんて、そんなの大昔の話です。EURO2016予選でのギリシャ連破が功を奏し、FIFAランキングが急上昇。ロシアW杯予選の抽選会では第4ポットにシードされました。つまりグループ内に「格下」が2国もいるのです。

ギリシャ連破、ラトビアに快勝など徐々に自信を付けているフェロー諸島。サポーターの期待も日に日に高まります。

最下層の第6ポットから同組になったのがアンドラ。先日ハンガリーを破る金星を挙げましたが、基本的には予選で勝ち点1取れるかどうかという次元で戦ってきた国です。

この予選で二桁勝ち点を狙うフェロー諸島。ホームでグループ最弱国を迎えるこの試合は、当然負けなど許されない、歴史上最も勝利を義務付けられた試合となったわけです。

バックスタンドの2列目を確保。チケットは日本円で3000円しない程度。

そんな試合にフェロー諸島の勝ちが観たい!という軽い気持ちの日本人がはるばるやってきたわけであります。フェロー諸島は首都トースハウンにあるナショナルスタジアム。

勝ち試合を観るイメージしか持ち合わせていません。前日、フィンランドでまさかの黒星を喫したアイスランド代表のようなことはあってはなりません。

最低限、勝ち点3を積み上げた試合

民宿のオーナー(UEFA- Aライセンス持ちのコーチ)がそう言ってました(笑)

フェロー諸島代表の出来にこのような評価を下せるとは隔世の念がありますね…泣けてきます。試合はどちらのペースとも言えない一進一退の展開でしたが、アンドラの攻撃に怖さが無かったので安心して観ていられました。

アンドラ戦ハイライト(フェロー諸島のネットテレビ局KVFのページへ)

前半30分にノルウェーでプレーする左ウイング、ギリ・ソーレンセンのゴールで先制するも、その後は両者決定力に欠き、1-0のまま試合は終了しました。

試合後の歓喜。どんな相手にだって勝つのはやっぱり嬉しいものだと再認識。

危なげは無かったものの、どこか消化不良。強豪国ならブーイングが出る出来でしたが、フェロー諸島としては歴史の中でそう多くはない勝利を、また一つ重ねられたので多くのファンは素直に喜ばしいといった反応でした。

名物のテトリスチャントが聴けたのも嬉しかったな。

ハードル低すぎ!オススメしたい出待ち

さて、試合後はせっかくここまで来たので出待ちです。小さなメインスタンドは入口もそう多くはないので選手が出てくればすぐわかります。

代表守護神のグンナー。すごい選手だから、緊張しちゃう気持ちよくわかります。

フェロー諸島の選手はサインくらいなら快く応じてくれます。フェロー諸島で唯一のイングランドプレミアリーグに出場したGKグンナー・ニールセンとも少し話ができました。

メインスタンド裏ではこんな感じで選手が目の前を通っていきます。

ビジターの選手たちもおそらく同じ出口から出て行きます。アンドラ代表はそうでした。皆さまに強調してオススメしたいポイントはここです。

大好きな国がフェロー諸島に遠征したら行くべき!!

ドイツやポルトガルといった欧州強豪国が試合に来る場所で、こんなにユルいスタジアムは世界中どこを探してもそうそう無いです。ライバルもかなり少ないですし。

出待ちのハードルが低いのはもちろんのこと、海外の代表チームが泊まれる大きなホテルは数えるほどしかありません。丘の上にある島内最高級のホテルにほぼ確実に泊まっています。先日のポルトガル代表もそうでした。予選の日程が出たら、もうその日のホテルを押さえれば、ロビーで遭遇できるかもしれません。

というわけで、大きな声で宣言させていただきます。

スター選手に会うならフェロー諸島においでよ!!

最果てのスタジアムは今…

この圧巻の風景、ネット上で見かけたことがある人も少なくないはず。

フェロー諸島といえば、やっぱりあの最果てのスタジアム。世界で最も過酷な環境下にあるように見えるこのスタジアム。Eidi(これでアイヤと読む)という小さい集落にあります。5年ぶりにここを再訪してきました。

バスの本数も少ないのでヒッチハイク。道中は壮観な景色の連続です。

訪れてみるとあれ…キャンピングカーがたくさん停まってる…どうやらオートキャンプ場となってしまったようです。

キャンピングカーが人工芝の上に…電源まで確保されていました。

ゴールは枠のみ残されて、ネットはありません。テーブルまでセットされちゃって。人工芝には駐車位置のマーキングまで。

後ろの防球ネットも穴だらけ。すぐ後ろは池なので迂闊にボールは蹴れません。

実は今年、町からもっと近い場所に新しいスタジアムが作られたんですね。

最近運用され始めた新スタジアム。これでも充分圧巻のロケーションですよね。

これまでのスタジアム、町から歩くと20分近くはかかりました。海沿いすぎる立地で風も強すぎて。スポンサー看板や人工芝も潮風ですぐ傷んでしまうし。お役御免も仕方のないことでしょう。

しかし人口600人ほどの町にこの新しいサッカー場です。サッカーへの需要の高さを感じます。

フェロー諸島の育成世代を見学

トースハウンの街に戻ってくると、民宿のオーナーが教えているU12チームの練習を見せてくれると車に乗せてくれました。向かった先は昨日の代表戦のスタジアム。激闘の翌日、同じピッチで練習できるなんて羨ましい…

オーナーは息子さんも連れて練習に向かいます。

練習の様子を観てると、コーチが怒ったり、手取り足取りすることはほとんど無く、自分たちで考えて動きなさいといった感じ。皆のひのびと、楽しそうにボールを蹴っていました。なかなか上手な子もちらほら。

「ここから未来のフェロー諸島代表選手が出てくるのです。」陳腐な表現ですけど、ここではその確率が果てしなく高いですからね。きっと。

各々が考えながらボールを扱う。そのことに特化した練習内容でした。

コーチ達は今後もっと競技力を高めていけると自信を持っています。隣国アイスランドの躍進も刺激となっているようです。何せあのアイスランドも、つい8年前まではFIFAランキングではフェロー諸島よりも下位に位置していたことがあったのですから。人口が問題でないことも彼らが証明してくれました。

島の誇りを胸に、そして島民の声援を背に受け、今後も勇敢に戦い続けてほしい。

人口はたった5万人だけど、本当にサッカー好きが多い島です。泊まった民宿のオーナーしかり、石を投げればサッカー関係者に当たる勢いです。サッカー好きであれば是非一度来てもらいたい島です。何か感じるものが絶対にあるはずなので。

流石に2日間は短かったですね。次はゆっくり、リーグ戦でも観に来たいなと思います。その時まで、島民の皆さんが心からサッカーを楽しめる素敵な島でありますように。

Footy Talks Vol.4「街中を練り歩くサポーターたち」

前回記事から引き続き昨年9月の北欧遠征のお話です。

9月2日、フィンランドは地方都市タンペレ。この日はロシアW杯予選フィンランドvsアイスランドの試合が開催された日です。

フィンランド第二の都市、タンペレでの開催に街は熱気に包まれていました。

アイスランドからは約2000人のサポーターが押し寄せ、チケットは完売。グループの下位に沈むフィンランドを気持ちよく叩いて悲願のW杯へ、と意気揚々と乗り込んだアイスランドサポーター達は街中のあらゆる場所で見かけることができました。郊外の湖のほとりにある公衆サウナでもたくさん見かけたくらいです。

約2000人のアイスランドサポーター。ヴァイキングクラップも圧巻でした。

そんなサポーターたち、試合時間が近付くと街中の広場に集まり、行列を成してスタジアムに向けて歩き始めました。

私はそれを沿道でただ眺めてただけなんですが、行列の中のサポーターのご厚意で、フィンランド側のチケットしか買えなかった私が念願のアイスランド側で観戦できたのでした。なんて出会いだ。

試合は前半フィンランドに直接FKを沈められ、アイスランドもゴールをこじ開けることが出来ず、0-1と痛い敗戦となりました。決勝点はニューヨークシティFC所属のアレックス・リング。4ヶ月前にヤンキースタジアムで出待ちした時にも優しくファンサービスしてくれた選手です。複雑だ…

その後、アイスランド代表はウクライナやトルコといった出場権を争うレベルの国をしっかりと叩いて、なんとかグループ首位でのワールドカップ出場を決めました。この敗戦が致命傷にならなくてよかった…

ここまで未勝利のフィンランドが金星。この後も強豪相手に負けなしで予選を終え、フィンランドにとってターニングポイントとなった一戦かもしれません。

そんなエピソードは置いておいて、今回に限らずヨーロッパでサッカーの代表戦を観に行くと、大抵の国ではこのようなサポーターの練り歩きを街の公道で見かけます。

中でも1番印象深かったのは欧州選手権EURO2016を観に行った時、マルセイユで見たハンガリーサポーターの行列でした。

マルセイユで見かけたハンガリーサポーターの練り歩き。その先頭集団。

最前線はユニフォームではなく黒いTシャツを着たいかにも「ヤバそう」な集団が仕切っていましたが、その後ろからは多くの一般サポーターたちが何百メートルにも渡って列を成しているのです。

列の後方は子供連れや女性の参加者も多く見られました。

普段だったら路面電車が通っている目抜き通りを何万人単位のサポーターが闊歩していく…非常に圧巻の光景でした。

これは国際大会でしたが、予選レベルでもアウェイサポーターが試合会場に列を成して闊歩していく様子はここフィンランドに限らず見られました。決してこれらの行列はサポーターが勝手に起こしているわけではなく、必ず現地の警察が行列のそばでしっかり監視していました。きっと時間やルートなど綿密に調整した上で行われているのでしょう。

日本ではオリンピックで活躍した選手が帰国後にパレードするような「凱旋」を称える気概はありますけど、こんな風にファン・サポーターが「決起」して練り歩くことはあまり無いですよね。自国に誇りを持って、戦いの地を練り歩く。日本代表サポーターだと海外遠征先でやっていたりするのでしょうか?あまり聞いたことはありませんが。

来年ラグビーワールドカップが、再来年には東京オリンピックが開催される我が国。自国の選手を応援しようと、全世界からスポーツファンがやってきます。

ラグビーやオリンピック競技を観に来る人々が、前述のような練り歩き、チャント合唱をするかわかりませんが、はるばるやってきた極東の地で自国への愛を叫びたいという人も少なくないはずです。

そんな場面に出会ったとき、我々は嫌そうな顔をするのではなく、温かくその様子を見守ったり、笑顔で歓迎することができたらいいなと思います。もちろんその人たちが法に触れるような行為をしていれば、警察を呼ぶ必要はあるでしょうが。多様性を認めるということも、これからの時代の「おもてなし」に必要な要素だと思いますし、何より多様性を楽しめてこそスポーツはもっと面白くなると思います。

今からしっかり心の準備をしておきたいものです。

Footy talks Vol.3 「北欧のコミュサカに触れてきた」

2017年9月1日

日本代表がロシアW杯を決めたその夜、スタジアムから空港に直行しました…

前日、日本代表がロシアW杯出場を決めたあの場所にいたはずなのに、私の体は既に北欧の大地にありました。

ヨーロッパもW杯予選は終盤戦を迎えていました。私は初出場を目指し好位置に付けていたアイスランド代表が敵地に乗り込む試合を観に、フィンランドはタンペレという工業都市に来ていました。

タンペレの街は代表戦がやって来るワクワク感に包まれていました。

昨年はフィンランド建国100年という節目の年だったそうで、フィンランドサッカー協会は代表戦を首都ヘルシンキだけでなく、地方都市でも積極的に開催していました。そのため今回ヘルシンキからバスで約3時間もかかる地方都市に飛ばされてきたわけです。大宮の試合を観に来たのに熊谷に飛ばされるような感覚ですが、時間はそれの倍以上でしたね…

観光にはもってこいのタンペレ

郊外の展望台から眺めたタンペレの街

地方都市か…と侮ることなかれ。タンペレの街はサッカーが絡まないフィンランド旅でも必ず訪れてもらいたい素敵な街でした。

日本人も多く訪れるムーミンミュージアム。

新しく開館したばかりのムーミンミュージアムを始め、ここタンペレが発祥というフィンレイソンを中心に、人気の北欧デザインが売りの雑貨店もたくさんあります。湖の国フィンランドを体感できる展望台や公衆サウナなど、見どころは満載です。人口約20万人とフィンランドとしては大都市ですが非常に落ち着いた空気が流れていてゆっくり見て回れることでしょう。

9月上旬でしたが湖の水はとても冷たかった…サウナで体の芯まで温めないとツラいですが、話のネタには最高です。

フィンランドの3部リーグを観に行きます

さてここからはサッカーのお話。正直、フィンランドはヨーロッパの中でもサッカー不毛の地の印象が強いでしょう。代表チームはW杯や欧州選手権の本大会に出場したことはありませんし、クラブチームの活躍を耳にすることもほとんどありません。長くサッカーを観ている人ならリトマネン、ヒーピア、ヤースケライネンといった往年の名選手くらいなら聞いたことがあるかもしれませんが。この国ではアイスホッケーが一番人気のスポーツだそうです。

今季からC大阪に加入した田中亜土夢選手が名門のHJKヘルシンキに所属し3シーズンプレーしていたことでフィンランドでもサッカーってやってるんだと思った人も多いのではないでしょうか。昨季はヨーロッパ各地でプレーを続けている「渡り鳥」和久井秀俊選手も2部リーグでプレーしていたようです。

ただ今回観てきたのは更にその下の3部リーグ。タンペレに本拠地を置くTPVというクラブの試合です。何故観ようかと思ったかというと、目当ての代表戦の前日にすることが何も無かったから。ただそれだけ。どんな雰囲気か全く予想が付かない中、スタジアムに向かったのです。

古豪クラブは意外としっかりした運営

5000人収容のコンパクトなスタジアム。9月上旬だと午後6時でもこの明るさ。

街の中心部にある宿から徒歩10分もかからず着いたタムラーンスタジアム。3部リーグのスタジアムとは思えないほど立派ですが、昨季トップリーグで3位だったイルベスFCと共同使用とのこと。入場料も取るようですが、今回は事前に連絡していたため、クラブスタッフからチケットはプレゼントしてもらいました。

スタジアム内のグッズショップ。その奥には温かいコーヒーや名物のソーセージを売っているブースがありました。

トップリーグを開催できるスタジアムだけあってグッズショップや飲食ブースも用意されています。タンペレご当地グルメは焼き立てのソーセージだそう。9月初旬とはいえ夜は涼しいタンペレ。ありがたいグルメです。

2ユーロで売られているタンペレ特産の豚のソーセージ。お好みでケチャップやマスタード、ピクルスをかける。

弱小国の3部リーグなんてほぼ草サッカーと同じ環境だろうと思っていまいたが、ここTPVは最低限興行としての体を成していて正直驚きでした。

それもそのはず、このTPVはフィンランドのトップリーグでも優勝経験がある古豪クラブ。同じ町のライバル、タンペレ・ユナイテッドとのダービーマッチは3部リーグにもかかわらず2,000人の観客が詰めかけるほど、サポーターは比較的多いクラブなのです。

荒れに荒れた試合・・・

さて試合の方ですが、あまり記事でこの言葉も使いたくないのですが、途方もない「バカ試合」でした。いろいろなことがハイライト映像にも乗り切っていないので以下箇条書きします。

  • 早々にホームのTPVが立て続けに2失点
  • 2失点目の交錯プレーでGK負傷交代
  • TPVも前半のうちに2点返して追いつく
  • 判定に激怒した相手監督が前半のうちに退席処分を食らう
  • 後半開始早々、相手選手が仲間割れを起こして1人退場
  • しかし10人になった相手チームに勝ち越しを許す
  • ただ数的有利を生かしてTPVはすぐに追いつく
  • 追い越せムードが漂う中、TPV唯一のフィンランド代表経験者インナネン選手がベテランらしからぬ足裏タックルで一発退場
  • 相手チームに試合終了間際の勝ち越し点を献上
  • フルタイム TPV 3-4 BK-46

何これ箇条書きだけでも疲れるんですけど…

ハイライトはこちらです

バックスタンドに集結したTPVサポーター。現地人も移民も共に応援します。

試合展開には疲れてしまいましたが、サポーターは個性的で面白かったです。もともと労働者階級のクラブということで敷居は低く、今では移民の方々が多く応援に加わっているとのこと。

とりあえず楽しそうなのは良いのですがマナーは守ってほしいですね…なんか急にピッチに乱入し始めたし…

ピッチ乱入した移民兄さんは地元のおばちゃんサポーターにこっぴどく叱られていましたが、そのおばちゃんの威勢のいい声から次のチャントが始まって、雰囲気の良い集団でした。

そしてアウェイのBK-46サポーターは劇的勝利にすごく嬉しそう…

荒れに荒れた試合を制し、勝ち点3を遠く離れた町に持ち帰る選手と10人ほどのサポーター。


フィンランド3部リーグは地域別で3つのリーグに分けられているそうですが、それでも彼らはこんなに離れた場所から遠征してきた精鋭たちのようです。お疲れ様でしたとしか言えない…

サッカーを通じて様々な人々が交わるスタジアム

移民中心の大人たちが応援する向かいのスタンドでは地元の子供たちが大きな声で選手にエールを送っていました。スタジアム内は老若男女、現地人や移民、様々な人が行き来する空間でした。違う人種でも同じ町に住み、同じチームを応援するためにここに集まっている。当たり前なのかもしれませんが、なんだか少し嬉しく感じます。

私が前述のスタグルのソーセージを食べていると、1人のおじさんが「やあ中国人、どうだ?美味いか?」と聞いてきました。私は美味いよとサムアップして、あなたも食べる?って返したところ「ごめんな、俺は食べられないんだ」と返されたんです。

ソーセージが嫌いだなんて珍しいなと思ったのですが、10秒おいて気が付きました。彼は宗教上食べてはいけないのだと。ハッとしました。

これも異文化が同じスタジアムの中でサッカーという競技を通じて共存しているということの証かもしれません。これ、日本だと「宗教上食べられないものはスタジアムで売るな!」になってしまうんじゃないかな。

サッカーが強いとは言えない、人気とも言えないフィンランド。その3部リーグという舞台においても、スタジアムが地域の人々にとって週末の楽しみの場となっていること、老若男女、どんな人種の人々でも楽しめる場となっていることに北欧のスポーツ文化の懐の深さを感じた次第です。

試合はすごい展開でしたが、いいものを観させてもらったと思います。

Footy talks Vol.1 「FIFAランク191位の島で」

 

このサイト立ち上げの記念すべき?初記事では今年1月に訪れたマルタ共和国のサッカーについてお話します。なぜそこに行ったのか?理由は2つ。島好きの好奇心がくすぐられたこと、もう1つは異常なほど安い航空券が出ていたからです。ターキッシュで往復52,000円でした。いつか行くなら思い立った時に。

 

 

地中海に浮かぶマルタ共和国。ヨーロッパではもともとリゾート地として有名で、英語が公用語のため最近は留学先としても人気の高い国です。

マルタと言えば、サッカー日本代表が歴史上一度だけ対戦したことがあります。2006年ドイツW杯開幕前、最後の親善試合。結果は1-0で勝利したが、スッキリしないまま大会を迎えることとなりました。その後の展開については語るまでもありませんが、あれからもう10年以上経つのですね・・・

マルタはヨーロッパサッカー界において、我が愛するフェロー諸島と共に「やられ役」を長く演じてきました。FIFAランキングも191位。(2017年7月現在)何人か実力のある選手が居て、たまに番狂わせを起こす立ち位置です。日本では誰も話題にすることが無いマルタのサッカーを覗いてみた時の発見。それが初回のテーマです。

強くないけど、サッカーが本当に好きな島

訪れて驚いたことは、マルタの人々は本当にサッカーが好きなことです。カルチョが大人気なイタリアが近いこともあるのでしょうか、至る所で人工芝のピッチを見かけますし、お土産屋にはマルタ騎士団のプリントが施されたサッカーボールが必ず売っています。まるで「国技」のような扱いです。

首都ヴァレッタ市街のサッカーグッズ専門店の品揃え。上1列と2段目の左側3つのペナントはなんとマルタ国内のクラブ。数々の強豪と並べて売られています。

マルタ共和国は有人島であるマルタ島・ゴゾ島がそれぞれサッカー協会を持っており、(UEFAに加盟しているのはマルタ島の協会)マルタ島では4部制、ゴゾ島では2部制の成年男子のリーグ戦が展開されています。2島合わせても人口は約40万人の国で、67ものクラブがしのぎを削っているのです。トップリーグの試合ともなれば熱狂的なサポーターがスタンドを埋め、ブラスバンドを率いた応援が展開されるクラブまであります。

マルタプレミアリーグの強豪、ヴァレッタFCのサポーター。

 

ただ人口に対するリーグ規模であれば、昨年のEUROで世界中を驚かせたアイスランドにもこれくらいは当てはまる話です。彼らは人口約32万人で5部リーグまで展開しています。マルタサッカーのすごいところは人口比の話ではないのです。人口でなければ何か…それは面積です。

グラウンドは学校の敷地内、クラブハウスは飲食店

起伏に富んだマルタの地形。比較的平坦な場所には既に住宅が密集している。

マルタ共和国の面積は316㎢。これは東京23区の半分、名古屋市や前橋市、八戸市とほぼ同じ面積だそうです。ここに67クラブあるというのです。多いですよね。少年サッカーではないのですから。1つの集落に対して1つ以上のクラブがある感覚です。

密集した住宅街の中にはめ込むようにして作られたスタジアム。

そしてマルタは平地が少ない地形をしています。起伏に富んでいてバス移動で気持ち悪くなるくらいです。当然全クラブが満足な広さのグラウンドを持てるわけではありません。

公式戦も協会で決められたいくつかのスタジアムでしか開催できません。1つの会場で大体1日2試合開催されます。

マルタプレミアリーグで使用されるハムルン・スパルタンズFCのホームスタジアム。建物が密集する街中に埋め込まれたスタジアムです。

練習グラウンドはトップリーグのクラブでなければフットサルコートに毛が生えた程度のものも結構多いです。私が訪れたゴゾ島の一番端の町San Lawrenzには小学校兼交番という敷地の中にポツンと人工芝のコートがありました。

ゴゾ島2部リーグのSt.Lawrence Spursの練習グラウンド。こじんまりとした人工芝コートですが、改装するまではこれよりも狭かったのだとか。

マルタではクラブハウスも特殊な形態を取っています。あるクラブはレストラン、あるクラブはバー、あるクラブはピザ屋、といったように飲食店に置くことが一般的です。クラブ名を冠した店に入ると、これまで獲得してきたトロフィーが飾られておりクラブの歴史が垣間見れます。そこで地元の人が飲食をしていて、サッカーの話だけでなく、世間話もしていたりします。

ゴゾ島2部リーグSannat Lions FCの名を冠したピッツェリア。注文すると焼き立てのピザを出してもらえる。
世間話が繰り広げられるバーカウンターの向こうにはこれまでクラブが獲得したトロフィーが飾られている。

売り上げはクラブの運営費にもなるようです。運営費を稼ぐためにクラブの店を開いたところもあれば、もともとクラブハウスだったところをバーに改装したところ、ただ住所を置く場所が飲食店しか無かっただけなど理由は各クラブごとに様々でした。新しくクラブハウスを建てるお金も土地も無い中では、誰もが気軽に訪れることができる飲食店でクラブハウスの形態を取る方法が人々に一番支持されているのかもしれません。

観戦した試合は金曜夜開催に加え、年に一度の大寒波に当たってしまい観客は十数人だけでした。残念・・・

私がゴゾ島滞在時にゴゾ島リーグを観戦した後、事前に連絡を取っていたSt.Lawrence Spurs FCの選手がクラブハウス兼バーに招待してくれました。そこには数々のお酒のボトルと別の店で買ってきたピザが用意されていて、1時間ちょっとの祝勝会が催されました。いつも試合後はこのバーで会話に花を咲かせるそうです。羨ましいひと時です。

試合後のSt.Lawrence Spursのバーにて。温かく出迎えてくれました。

San Lawrenzの集落は人口700人ほどですが、試合によっては100人近くの観客が来ることもあるそうです。マルタ国内で展開されているサッカーは決してレベルの高いものではありませんが、どの町のクラブもそれぞれの地域で人々が集う場所としての機能を果たしており、信仰心と地元愛が強いマルタの人々にとっては教会と同じくらい、無くてはならない存在のようです。

限られた環境の中でも楽しめる心持ちは学びたい

限られた資源の中で工夫してサッカーを楽しむマルタの人々を見て、改めて考えさせられました。

日本はどうでしょう。球技専用のスタジアムも多くなり、いわきFCのように始めから設備を一流のものに揃えるクラブまで現れましたが、それはまだ一部の話に過ぎず、ハード面で苦しい状況に直面している地域も多いです。日本の場合、設備の欠如が昇格不可など不利益にも繋がるので、とかくネガティブになりがちです。

勿論より良い環境を求めることを否定するわけではありません。競技力強化のためにも一定以上の設備は必要なものです。

ただ、無い物ねだりをするのではなく、今ある環境下でいかに魅力を見出していくか。その気持ちは忘れてはいけないと感じます。綺麗な専スタが人を集めているのではありません。楽しいところ、面白いところに人が集まってくるのだと思います。

新鮮なサッカー観を示してくれたマルタの人々に心からのリスペクトを。