Footy talks Vol.2「海のボールパーソンとお話してきた。」

2017年、北九州に多くのサッカーファンの心を躍らせる素敵なスタジアムが誕生しました。同時に、ここでしか考えられないある「スタッフ」も登場しました。

彼の名は「海のボールパーソン」

今回、8月26日「ギラフェス」と銘打ったFC琉球戦の前に北九州市漁業協同組合長浜支所を訪問しました。その時のお話、とても面白かったので少し長くなりますが会話形式のままご紹介します。

お話を伺ったのは8月19日の藤枝戦で2回目の海ポチャボールを回収したNさん弟(以下N弟)と、この日初めて海のボールパーソンに挑戦するNさん兄(以下N兄)。組合長のKさん(以下K)、同僚の漁師のYさん(以下Y)も同席いただきました。

 

footysab(以下F)「早速ですが、みなさんは以前からギラヴァンツ北九州というサッカークラブをご存知でしたか?」

一同「うん、知っとったよ」

F「試合は観に行ったことありますか?」

Y「自分はまだ本城で試合をやっていた頃、まだJ2の時に2回くらい行ったかな。地域で応援してくださいって声かけがあって招待券もらってね」

N弟「俺らは観に行ったことないなあ」

F「普段からサッカーと深く関わっていたわけではないんですね。漁師の仕事をしていて、海のボール拾いなんてまず考えられなかったと思いますが、このお話をもらった時どう感じましたか?」

一同「どうって、ねえ(笑)」

F「土日まで駆り出されて面倒くさいなとか思いませんでした?」

N兄「いやいや、それは全然ないよ」

K「強制じゃないし、行きたくない人は手を挙げなきゃいいだけの話やしな」

F「みなさんのおかげで試合運営ができるので感謝している人も多いと思いますよ。ところで試合当日はどのような流れで準備していますか?」

N弟「船を出す前にエンジンとか、動作をチェックするね」

N兄「俺もさっきキミが来る前に確認したよ」

N弟「そして18時からの試合だと大体16時半くらいには船を出すよ。お客さん入れる時間によって変わることもあるみたいだけど」

この日のボールパーソン、優漁丸は16時半ぴったりに長浜支所を出発していました。

F「そうなんですか。自分6月にもミクスタに試合観に来てて、たしかその時は第5秀丸…」

N弟「あれ俺の船や!あの紹介の時な、カメラでズームされてたのにアナウンス聞こえなくて手を振れなかったんや。本当は何かしなきゃいけなかったのに(笑)」

F「えー(笑)船を見て気になったんですけど、ポジションを探るかのような動きがあった気がします。船内で試合映像見ながら動かしたりしているんでしょうか?」

K「あんなんただ風に流されているだけやないの?」

N弟「風で流れてるだけや(笑) 映像も見てないよ。試合中はスタジアムの隙間からギラヴァンツの応援団が見えるところにいることが多いね。そこにいれば、大体どこにボールが落ちてもわかるし」

N兄「(今日初めてだから)ちょっと後で指示してくれ(笑) どの辺おったらええか全然わからん(笑)」

大体この辺りに位置取って、北の方まで見渡しているそうです。

F「隙間からサポーターは見えても試合内容は見えないですよね」

N弟「試合は見えないね。電光掲示板が見えるから良いシーンは見えるけど。あと高く上がったボールは意外と見えてるよ

F「試合中に気を付けていることってありますか」

N弟「試合中はボールが見える位置におらんといけんし、あとスタンド下の通路を行ったり来たりしてるお客さんにも結構気を使うよね

N兄「あそこは柵が低いし頑丈やないからな。俺も多分ボールより観客の方に気を使うわ。子供も多いしな

海はよく見えますが、子供でも乗り越えられそうな簡易的な柵。海のボールパーソンは観客の安全も気にしています。

F「先週、ナイトゲームで実際にボールを取った時のことですが、ボールがヒュッとスタンドから飛んで来てもわかるんですね」

N弟「わかるわかる。一応チームから連絡来るし、無くても歓声でわかる。試合の歓声と明らかに違う。ワー!の質が違うからね

N兄「うわー!それめっちゃプレッシャーやん(笑)」

Y「へえ〜海に出る〜って感じのボールだと歓声でわかるもんなのな」

N兄「俺がそれをボレーシュートでスタジアムに返す…」

Y「できるか!(爆笑)」

N兄「この船長うまっ!ギラヴァンツの選手よりうまっ!みたいな(笑)」

Y「そういや、1試合で3球外に出たら1つ貰えるって噂もあるけどホントなん?」

N弟「ん?わからん」

F「そんな噂まであるんですね(笑)」

※真相は定かではありません。

長浜支所からミクスタまでは目と鼻の先の距離です。

F「そうだ、せっかく漁師さんにお話を伺える貴重な機会なので、お魚の話を聞きたいです。ここではどんな魚を捕れますか?」

N兄「いろいろ獲れるよ(笑) 年間通して」

F「有名なお魚とかあります?」

N弟「そりゃたこだね、関門海峡たこ。あれはブランドものだからね」

漁協の敷地にも張り出されている看板商品、関門海峡たこ。潮の流れが速い関門海峡では身が締まって育つので美味しいそう。

Y「今日は朝市やっとんたんよ」

F「え〜そうなんですか。もっと早く来ればよかった…」

※長浜支所さんでは毎月第2、第4土曜日に朝市を開催しているそうです。→ 北九州市の朝市

N弟「でもスタジアムでここ(長浜支所)の人がたこめしとか売っとるよ

F「え!ホントですか!」

豊栄のたこめし(500円)関門海峡たこの歯ごたえはもちろん、たこと一緒に炊かれたごはんはほんのり海の香りがして美味しかったです。

N弟「あと、たこカツバーガーとか」

F「!!!」

N兄「たこカツバーガー?あいつそんなん作ったんか。一個食ってみたいな」

F「ここ長浜支所さんで獲れたたこがスタジアムで味わえるってことですね!!!」

関門海峡たこを使用した、たこカツバーガー(400円)サクサクの衣と中の歯ごたえあるたこのハーモニーが絶妙な逸品。

N兄「関門海峡たこ、NHKにも取り上げられとったしな。ただし売り切れ御免や」

N弟「数もたくさん作れんしな」

(おもむろに電話を取り出し製造者に本日の在庫を確認するKさん)

N兄「いやあ、たこカツバーガー食ってみたいな。モスバーガーで出したらいいのにね(笑)

K「おう、1つずつ取り置きしてもらったから、後でこの名刺持っていきな!」

F「ありがとうございます!!!」

たこめし、たこカツバーガーはスタジアム内コンコースの売店で販売されています。海のボールパーソンの「本業」を垣間見ることができます。

F「海のボールパーソンを始められてから全国での反応がすごいですが、どう感じてますか?」

N兄「ってかそんなすごいん?」

F「いやあ、すごい反響ですよ」

Y「あんなんに興味があるんやね」

F「サッカー好きって結構感性豊かなんです(笑)」

N弟「ガチで変なことしちょったら炎上するけんね」

N兄「カメラでアップになった時にお尻なんて出そうものなら・・・」

F「絶対炎上するんでやめてください(笑) みんな写真撮りますから」

N弟「みんなスタンドからよう手を振ってくるけんね、あんまり知らん顔してると多分叩かれよる(笑)」

N兄「そっかあ、どうしたらいい?こんな汚れた作業着じゃダメだね?」

※出勤時はきれい目なチェックのシャツに着替えてらっしゃいました。

Y「マスコットの着ぐるみでも借りとったらええん」

K「暑いのう!はっはっは(笑)」

Y「しかしまあ、みんなカメラで綺麗に撮りよるね」

N弟「こないだなんて近くに落ちてきたから結構早くボール掬い上げよったのに撮られてたからねえ」

F「タブレットとWi-Fiあるんでちょっと映像見てみます?」

 

(他にもSNSにたくさんアップされている映像を見ました)

N兄「すごく綺麗に撮りよるね」

F「先週の海ポチャボールは一発で華麗にキャッチしましたからねーこれは今夜のハードル高いですね(笑)

K「ボールに傷付けんように〜とか言われよったし(笑)」

N弟「この日の観客3000なんぼやったけど、今日満員やし(笑)

Y「上手く取れんかったら画面にヘタ!ヘタクソ!ってたくさん流れよる(笑)」

(一同大爆笑)

N兄「ボール上手く拾いきらんで野次られたら多分キレるけー(笑)」

F「いやぁ、本当にこれくらい話題性抜群なんですよ。海のボールパーソン」

N弟「俺、第5秀丸の紹介のやつがたくさん拡散されてるのはすごかったもんね。アレ怖いと思ったわ」

 

F「自分がアップしたものも、瞬時にリツイートやいいね!の応酬でした」

N兄「なら俺今回は1万いいね!くらい目指そうかな」

N弟「俺はいいね!じゃなくて逆の押すわ笑 (親指を下に向けながら)」

(再び一同大爆笑)

N兄「いやただね、ボール拾いだけど、やっぱ人間よ。命あるものが1番」

N弟「ボールより人が落ちたら困るもんな。ボールは浮いちょるけど人はそうもいかん」

Y「地域で救難救済会って組織があるんよ。海の事故に備えて。きっとそういう目的もあると思う。海に人が飛び込んだとか、車が飛び込んだとか結構あるんだよ」

F「そういった想いは是非多くのサッカーファンにも知ってもらいたいです」

N弟「日本全国船を持ってる人ならそう思っとるよ」

N兄「そうな。勝ったからっていって、飛び込まれると困るね。気持ちはわからなくないけど」

N弟「ギラヴァンツさんが球拾いとして取り上げてるのはいいけど、こっちはちょっと趣旨が違う。スタジアムの中に人がおる分にはいいけど、(試合が終わって)一斉に人が通路に出てくるとやっぱり心配するよ」

F「皆さんのそういった想いが聞けただけでも、とても貴重な時間でした。ありがとうございました!今夜の試合もよろしくお願いします。」


その夜、ミクスタには今季開幕戦に次ぐJ3史上2番目の記録となる13880人の観客が集まりました。目標の15000人には届かなかったものの、見た目ではほぼ満席でアウェイ側ゴール裏の最後列にも立ち見客がいました。

結果も伴い、黄色に染まったスタジアムは最高の雰囲気。打ち上げ花火が大観衆の中での勝利に花を添えました。

わずか4分間で600発もの花火が夜空を彩りました。この花火の時間も動員として海に出ている漁師さんがいたそうです。

こうして「ギラフェス」が成功に終わったのはクラブや選手、また多くの協賛企業の力も大きいでしょう。しかし、こうして文句も言わずに裏方の仕事をしてくれる地域の人々にも支えられていたのです。

そんなこと知っているつもりだったけど、こうやって北九州の心優しい皆さんに出会って、改めて裏方で支えてくれる方々への感謝の気持ち、忘れないようにしたいと感じた次第です。

最後になりましたが、北九州市漁業協同組合長浜支所の皆さん、貴重な機会を本当にありがとうございました。またミクスタへ美味しいたこ、食べに行きますね。

Footy talks Vol.1 「FIFAランク191位の島で」

 

このサイト立ち上げの記念すべき?初記事では今年1月に訪れたマルタ共和国のサッカーについてお話します。なぜそこに行ったのか?理由は2つ。島好きの好奇心がくすぐられたこと、もう1つは異常なほど安い航空券が出ていたからです。ターキッシュで往復52,000円でした。いつか行くなら思い立った時に。

 

 

地中海に浮かぶマルタ共和国。ヨーロッパではもともとリゾート地として有名で、英語が公用語のため最近は留学先としても人気の高い国です。

マルタと言えば、サッカー日本代表が歴史上一度だけ対戦したことがあります。2006年ドイツW杯開幕前、最後の親善試合。結果は1-0で勝利したが、スッキリしないまま大会を迎えることとなりました。その後の展開については語るまでもありませんが、あれからもう10年以上経つのですね・・・

マルタはヨーロッパサッカー界において、我が愛するフェロー諸島と共に「やられ役」を長く演じてきました。FIFAランキングも191位。(2017年7月現在)何人か実力のある選手が居て、たまに番狂わせを起こす立ち位置です。日本では誰も話題にすることが無いマルタのサッカーを覗いてみた時の発見。それが初回のテーマです。

強くないけど、サッカーが本当に好きな島

訪れて驚いたことは、マルタの人々は本当にサッカーが好きなことです。カルチョが大人気なイタリアが近いこともあるのでしょうか、至る所で人工芝のピッチを見かけますし、お土産屋にはマルタ騎士団のプリントが施されたサッカーボールが必ず売っています。まるで「国技」のような扱いです。

首都ヴァレッタ市街のサッカーグッズ専門店の品揃え。上1列と2段目の左側3つのペナントはなんとマルタ国内のクラブ。数々の強豪と並べて売られています。

マルタ共和国は有人島であるマルタ島・ゴゾ島がそれぞれサッカー協会を持っており、(UEFAに加盟しているのはマルタ島の協会)マルタ島では4部制、ゴゾ島では2部制の成年男子のリーグ戦が展開されています。2島合わせても人口は約40万人の国で、67ものクラブがしのぎを削っているのです。トップリーグの試合ともなれば熱狂的なサポーターがスタンドを埋め、ブラスバンドを率いた応援が展開されるクラブまであります。

マルタプレミアリーグの強豪、ヴァレッタFCのサポーター。

 

ただ人口に対するリーグ規模であれば、昨年のEUROで世界中を驚かせたアイスランドにもこれくらいは当てはまる話です。彼らは人口約32万人で5部リーグまで展開しています。マルタサッカーのすごいところは人口比の話ではないのです。人口でなければ何か…それは面積です。

グラウンドは学校の敷地内、クラブハウスは飲食店

起伏に富んだマルタの地形。比較的平坦な場所には既に住宅が密集している。

マルタ共和国の面積は316㎢。これは東京23区の半分、名古屋市や前橋市、八戸市とほぼ同じ面積だそうです。ここに67クラブあるというのです。多いですよね。少年サッカーではないのですから。1つの集落に対して1つ以上のクラブがある感覚です。

密集した住宅街の中にはめ込むようにして作られたスタジアム。

そしてマルタは平地が少ない地形をしています。起伏に富んでいてバス移動で気持ち悪くなるくらいです。当然全クラブが満足な広さのグラウンドを持てるわけではありません。

公式戦も協会で決められたいくつかのスタジアムでしか開催できません。1つの会場で大体1日2試合開催されます。

マルタプレミアリーグで使用されるハムルン・スパルタンズFCのホームスタジアム。建物が密集する街中に埋め込まれたスタジアムです。

練習グラウンドはトップリーグのクラブでなければフットサルコートに毛が生えた程度のものも結構多いです。私が訪れたゴゾ島の一番端の町San Lawrenzには小学校兼交番という敷地の中にポツンと人工芝のコートがありました。

ゴゾ島2部リーグのSt.Lawrence Spursの練習グラウンド。こじんまりとした人工芝コートですが、改装するまではこれよりも狭かったのだとか。

マルタではクラブハウスも特殊な形態を取っています。あるクラブはレストラン、あるクラブはバー、あるクラブはピザ屋、といったように飲食店に置くことが一般的です。クラブ名を冠した店に入ると、これまで獲得してきたトロフィーが飾られておりクラブの歴史が垣間見れます。そこで地元の人が飲食をしていて、サッカーの話だけでなく、世間話もしていたりします。

ゴゾ島2部リーグSannat Lions FCの名を冠したピッツェリア。注文すると焼き立てのピザを出してもらえる。
世間話が繰り広げられるバーカウンターの向こうにはこれまでクラブが獲得したトロフィーが飾られている。

売り上げはクラブの運営費にもなるようです。運営費を稼ぐためにクラブの店を開いたところもあれば、もともとクラブハウスだったところをバーに改装したところ、ただ住所を置く場所が飲食店しか無かっただけなど理由は各クラブごとに様々でした。新しくクラブハウスを建てるお金も土地も無い中では、誰もが気軽に訪れることができる飲食店でクラブハウスの形態を取る方法が人々に一番支持されているのかもしれません。

観戦した試合は金曜夜開催に加え、年に一度の大寒波に当たってしまい観客は十数人だけでした。残念・・・

私がゴゾ島滞在時にゴゾ島リーグを観戦した後、事前に連絡を取っていたSt.Lawrence Spurs FCの選手がクラブハウス兼バーに招待してくれました。そこには数々のお酒のボトルと別の店で買ってきたピザが用意されていて、1時間ちょっとの祝勝会が催されました。いつも試合後はこのバーで会話に花を咲かせるそうです。羨ましいひと時です。

試合後のSt.Lawrence Spursのバーにて。温かく出迎えてくれました。

San Lawrenzの集落は人口700人ほどですが、試合によっては100人近くの観客が来ることもあるそうです。マルタ国内で展開されているサッカーは決してレベルの高いものではありませんが、どの町のクラブもそれぞれの地域で人々が集う場所としての機能を果たしており、信仰心と地元愛が強いマルタの人々にとっては教会と同じくらい、無くてはならない存在のようです。

限られた環境の中でも楽しめる心持ちは学びたい

限られた資源の中で工夫してサッカーを楽しむマルタの人々を見て、改めて考えさせられました。

日本はどうでしょう。球技専用のスタジアムも多くなり、いわきFCのように始めから設備を一流のものに揃えるクラブまで現れましたが、それはまだ一部の話に過ぎず、ハード面で苦しい状況に直面している地域も多いです。日本の場合、設備の欠如が昇格不可など不利益にも繋がるので、とかくネガティブになりがちです。

勿論より良い環境を求めることを否定するわけではありません。競技力強化のためにも一定以上の設備は必要なものです。

ただ、無い物ねだりをするのではなく、今ある環境下でいかに魅力を見出していくか。その気持ちは忘れてはいけないと感じます。綺麗な専スタが人を集めているのではありません。楽しいところ、面白いところに人が集まってくるのだと思います。

新鮮なサッカー観を示してくれたマルタの人々に心からのリスペクトを。