Footy talks Vol.1 「FIFAランク191位の島で」

 

このサイト立ち上げの記念すべき?初記事では今年1月に訪れたマルタ共和国のサッカーについてお話します。なぜそこに行ったのか?理由は2つ。島好きの好奇心がくすぐられたこと、もう1つは異常なほど安い航空券が出ていたからです。ターキッシュで往復52,000円でした。いつか行くなら思い立った時に。

 

 

地中海に浮かぶマルタ共和国。ヨーロッパではもともとリゾート地として有名で、英語が公用語のため最近は留学先としても人気の高い国です。

マルタと言えば、サッカー日本代表が歴史上一度だけ対戦したことがあります。2006年ドイツW杯開幕前、最後の親善試合。結果は1-0で勝利したが、スッキリしないまま大会を迎えることとなりました。その後の展開については語るまでもありませんが、あれからもう10年以上経つのですね・・・

マルタはヨーロッパサッカー界において、我が愛するフェロー諸島と共に「やられ役」を長く演じてきました。FIFAランキングも191位。(2017年7月現在)何人か実力のある選手が居て、たまに番狂わせを起こす立ち位置です。日本では誰も話題にすることが無いマルタのサッカーを覗いてみた時の発見。それが初回のテーマです。

強くないけど、サッカーが本当に好きな島

訪れて驚いたことは、マルタの人々は本当にサッカーが好きなことです。カルチョが大人気なイタリアが近いこともあるのでしょうか、至る所で人工芝のピッチを見かけますし、お土産屋にはマルタ騎士団のプリントが施されたサッカーボールが必ず売っています。まるで「国技」のような扱いです。

首都ヴァレッタ市街のサッカーグッズ専門店の品揃え。上1列と2段目の左側3つのペナントはなんとマルタ国内のクラブ。数々の強豪と並べて売られています。

マルタ共和国は有人島であるマルタ島・ゴゾ島がそれぞれサッカー協会を持っており、(UEFAに加盟しているのはマルタ島の協会)マルタ島では4部制、ゴゾ島では2部制の成年男子のリーグ戦が展開されています。2島合わせても人口は約40万人の国で、67ものクラブがしのぎを削っているのです。トップリーグの試合ともなれば熱狂的なサポーターがスタンドを埋め、ブラスバンドを率いた応援が展開されるクラブまであります。

マルタプレミアリーグの強豪、ヴァレッタFCのサポーター。

 

ただ人口に対するリーグ規模であれば、昨年のEUROで世界中を驚かせたアイスランドにもこれくらいは当てはまる話です。彼らは人口約32万人で5部リーグまで展開しています。マルタサッカーのすごいところは人口比の話ではないのです。人口でなければ何か…それは面積です。

グラウンドは学校の敷地内、クラブハウスは飲食店

起伏に富んだマルタの地形。比較的平坦な場所には既に住宅が密集している。

マルタ共和国の面積は316㎢。これは東京23区の半分、名古屋市や前橋市、八戸市とほぼ同じ面積だそうです。ここに67クラブあるというのです。多いですよね。少年サッカーではないのですから。1つの集落に対して1つ以上のクラブがある感覚です。

密集した住宅街の中にはめ込むようにして作られたスタジアム。

そしてマルタは平地が少ない地形をしています。起伏に富んでいてバス移動で気持ち悪くなるくらいです。当然全クラブが満足な広さのグラウンドを持てるわけではありません。

公式戦も協会で決められたいくつかのスタジアムでしか開催できません。1つの会場で大体1日2試合開催されます。

マルタプレミアリーグで使用されるハムルン・スパルタンズFCのホームスタジアム。建物が密集する街中に埋め込まれたスタジアムです。

練習グラウンドはトップリーグのクラブでなければフットサルコートに毛が生えた程度のものも結構多いです。私が訪れたゴゾ島の一番端の町San Lawrenzには小学校兼交番という敷地の中にポツンと人工芝のコートがありました。

ゴゾ島2部リーグのSt.Lawrence Spursの練習グラウンド。こじんまりとした人工芝コートですが、改装するまではこれよりも狭かったのだとか。

マルタではクラブハウスも特殊な形態を取っています。あるクラブはレストラン、あるクラブはバー、あるクラブはピザ屋、といったように飲食店に置くことが一般的です。クラブ名を冠した店に入ると、これまで獲得してきたトロフィーが飾られておりクラブの歴史が垣間見れます。そこで地元の人が飲食をしていて、サッカーの話だけでなく、世間話もしていたりします。

ゴゾ島2部リーグSannat Lions FCの名を冠したピッツェリア。注文すると焼き立てのピザを出してもらえる。
世間話が繰り広げられるバーカウンターの向こうにはこれまでクラブが獲得したトロフィーが飾られている。

売り上げはクラブの運営費にもなるようです。運営費を稼ぐためにクラブの店を開いたところもあれば、もともとクラブハウスだったところをバーに改装したところ、ただ住所を置く場所が飲食店しか無かっただけなど理由は各クラブごとに様々でした。新しくクラブハウスを建てるお金も土地も無い中では、誰もが気軽に訪れることができる飲食店でクラブハウスの形態を取る方法が人々に一番支持されているのかもしれません。

観戦した試合は金曜夜開催に加え、年に一度の大寒波に当たってしまい観客は十数人だけでした。残念・・・

私がゴゾ島滞在時にゴゾ島リーグを観戦した後、事前に連絡を取っていたSt.Lawrence Spurs FCの選手がクラブハウス兼バーに招待してくれました。そこには数々のお酒のボトルと別の店で買ってきたピザが用意されていて、1時間ちょっとの祝勝会が催されました。いつも試合後はこのバーで会話に花を咲かせるそうです。羨ましいひと時です。

試合後のSt.Lawrence Spursのバーにて。温かく出迎えてくれました。

San Lawrenzの集落は人口700人ほどですが、試合によっては100人近くの観客が来ることもあるそうです。マルタ国内で展開されているサッカーは決してレベルの高いものではありませんが、どの町のクラブもそれぞれの地域で人々が集う場所としての機能を果たしており、信仰心と地元愛が強いマルタの人々にとっては教会と同じくらい、無くてはならない存在のようです。

限られた環境の中でも楽しめる心持ちは学びたい

限られた資源の中で工夫してサッカーを楽しむマルタの人々を見て、改めて考えさせられました。

日本はどうでしょう。球技専用のスタジアムも多くなり、いわきFCのように始めから設備を一流のものに揃えるクラブまで現れましたが、それはまだ一部の話に過ぎず、ハード面で苦しい状況に直面している地域も多いです。日本の場合、設備の欠如が昇格不可など不利益にも繋がるので、とかくネガティブになりがちです。

勿論より良い環境を求めることを否定するわけではありません。競技力強化のためにも一定以上の設備は必要なものです。

ただ、無い物ねだりをするのではなく、今ある環境下でいかに魅力を見出していくか。その気持ちは忘れてはいけないと感じます。綺麗な専スタが人を集めているのではありません。楽しいところ、面白いところに人が集まってくるのだと思います。

新鮮なサッカー観を示してくれたマルタの人々に心からのリスペクトを。

 

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